【現代人の姿勢の悪化】
デスクワークが多い現代人にとって、姿勢の悪化は避けられません。腕を前に出し続けているので肩甲骨が前にでて前肩になり、胸の筋肉は固まります。また頭が下がってしまいますと、猫背になり腹筋が固まります。
姿勢の悪化は子供たちにとっても大問題です。現在はスマホやタブレットなど、インターネットを通して動画やゲームを楽しむことができます。そのため運動不足が深刻化し、筋力や運動能力の低下が指摘されています。また好ましくない姿勢で長時間すごしてしまうので、悪い姿勢が『癖』となり、さらに筋力や柔軟性の低下が起こってしまいます。
【姿勢の悪化による弊害】
姿勢を維持する筋力の低下により、学校現場で子供たちは、キレイな姿勢を維持することができていないと先生方からよくお聞きします。例えば机に肘をついたり、腕を枕のように使って頭を置いたり、机に斜めに向かって座っていたりなど、それぞれ個性的な姿勢で授業を受けています。これでは授業に集中することができませんし、内容も頭に入ってきづらいでしょう。大人はさすがにそんな無茶苦茶な姿で仕事はできませんから、仕方なく姿勢を正すのですが、姿勢を正そうと意識することに集中力やエネルギーを奪われ、仕事の効率が低下する可能性があります。
弊害は机に向かっている場面だけではありません。より、深刻なのは、姿勢を維持する筋力が低下することにより、歩行時にバランスが崩れたものを戻せず、転倒しやすくなることです。転倒することにより打撲・捻挫、ひいては骨折を引き起こす可能性があります。特に高齢者の方にとっては、さらにリスクが高くなるでしょう。
もちろん、スポーツをする方にとっても姿勢が維持できず、すぐにバランスを崩してしまうのは致命的です。スポーツをする時だけ姿勢を良くしようと思ってもそうはいきません。
それでは、どうすれば姿勢はよくなるのでしょうか?時々、猫背になっている子供に対して『猫背になっているよ!姿勢を正して!』と親御さんが指摘する場面(僕も相当言われました・・)を見ます。
ただ、良い姿勢をしようと意識することは大事だとしても、筋力が伴っていなければ、いくら厳しく言われても維持することはできません。意識とか根性の問題ではないのです。
【どんな筋肉を鍛えれば姿勢は良くなる?】
では、どんな筋肉を鍛えればよいのでしょうか。まず、下の表をご覧ください。
下肢の姿勢保持筋の働き
筋肉 |
貢献度 |
母趾外転筋 |
++ |
小趾外転筋 |
± |
長母趾屈筋 |
+ |
後脛骨筋 |
+ |
ヒラメ筋 |
++++ |
腓腹筋 |
+ |
大腿二頭筋 |
± |
大殿筋 |
± |
中殿筋 |
+ |
(中村隆一,2002)
この表を見ると、姿勢保持筋の中でも、『ヒラメ筋』が重要であることがわかります。なぜヒラメ筋が重要であるかというひとつの理由は、『筋繊維組成の割合』にあります。下の表をご覧ください。
筋繊維組成の割合
速筋繊維(%) |
遅筋繊維(%) |
|
腓腹筋 |
49.2 |
50.8 |
ヒラメ筋 |
11.0 |
89.0 |